【中学受験国語】そうだったのか!?問題を作る人はこんなことを考えている

国語の問題で、「記述、記号、書き抜きは、どれが一番難しい?」と聞くと、「記述!」と答える子がほとんどです。

中学受験の国語と言えば、記述問題に頭を悩ませている子はたくさんいますよね。

実際に、「うちの子、記述が苦手で…」というご相談はよく受けます。

また、「記号は4つの選択肢から選ぶだけなので、当たる可能性が高い!」、「書き抜きは文中に描かれていることから見つけるから一番カンタンでしょ。」なんて、お子様に伝えていませんか?

しかし、問題全体からすると、記述、記号、書き抜きを難易度順に並べると、書き抜き>記号>記述となるものが多いです。

この難易度の順番を知ることは、実は問題を作る人が考えていることを知ることにつながるのです!

その理由を見ていきましょう。

目次

【前提】出題者の視点に立って考えるって?

そもそも、なぜ「出題者の視点に立って考える」のでしょうか。これは国語学習の大前提でもあるため、別の記事にまとめています。

詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

要するに、国語はテストの問題なので、文章を書いた筆者、作者が本当に考えたことでなく、出題者が答えてほしいこと、つまり、みんなを納得させられる答えを見つけることが大事です。

そこで、出題者の視点から、記述、記号、書き抜き問題で、何を聞きたいのか、解説していきます。

【記述】特徴・取り組みやすい部分・難しい部分

記述問題で出題者が聞きたいことは、以下の3点です。

①書いてある内容、言い回しを把握しているか

②一般常識に沿って考えられるか

③問いの意味を理解し、文中の根拠が探せるか

順番に見ていきましょう。

①書いてある内容、言い回しを把握しているか

ここでは、説明文の場合について話します。

説明文は、小学生にとっては難しい言い回しや、聞いたことが無い考えについて書かれている場合がほとんどです。

それもそのはず、入試問題の多くは、大人向けに書かれた文章が中心なのですから。

そんな文章を読んでいるうちに、だんだん苦しくなって集中が切れ、いつの間にか文字を目で追いかけているだけになった経験は、私にもたくさんありました。

でも、安心してください。そんな経験をしたことがあっても、国語は正しい取り組み方をすれば、きちんと力がつくのです。

具体的な方法は、まとめのところにリンクを貼ってありますので、ぜひ最後までお読みください。

さて、出題者は、小学生に大人と同じ語彙力、思考を求めているのでしょうか?

他の記事でも何度も触れていますが、国語で問われる力は、「年齢・能力に応じた現場思考力」です。

説明文記述で出題者が聞きたいことは、「よく分からない言葉や言い回しがいくつかあっても、そこをうまく回避しながら、筆者の言いたいことの要点が掴めているか。」という点がほとんどです。

それを確かめるために、問いかけを通して文中のある部分(複数ある場合もあり)に着目させ、その部分を使ってまとめさせる問題が原則となります。

②一般常識に沿って考えられるか

こちらは物語文を引き合いに出して話しましょう。

物語文の記述はズバリ、「ある場面での感情を表す言葉を知っているか」を聞いてきます。

それでも、「自らが高齢になって認知症になりつつある自分と向き合う老婆の気持ち」とか、「夫と死別後に再婚したい相手と出会ったのに、娘がその事実を受け入れられないときの母の葛藤」とか、小学生が経験したことがあるでしょうか?

そんなはずありませんよね!

でも、物語文は、作者が発する言葉から、喜怒哀楽を基本とする感情を読み取ることはできるのです。

例に挙げた老婆は喜んだりしませんし、母は絶望したりしません。

不安だったり、板挟みだったりという気持ちを表す言葉を100語程度覚えて、評価すればよいのです。

③問いの意味を理解し、文中の根拠が探せるか

これは、説明文、物語文とも共通です。

中学受験では、先ほど述べた最低限の一般常識的なことも聞いてきますが、基本的には文中に根拠があることしか書かせません。

これも、出題者の立場に立ってみれば当然のことで、「答えとして使う部分はここだ」と明確に示すことが出来なければ、採点のしようがありません。

だから、自分がどう書きたいかでなく、出題者がどう答えさせたいのかを、いつも考えなければなりません。

【記号】の特徴・取り組みやすい部分・難しい部分

記号問題で出題者が聞きたいことについて、2つの例を挙げてみましょう。

①選択肢のキーワードに気づけるか

②選択肢を比較できるか

③選択肢は積極的に引っ掛けてくる

の3点です。

順番に見ていきましょう。

①選択肢のキーワードに気づけるか

記述問題のヒントは文中にあることは分かっていても、選択問題のヒントも同様に文中にあることが分かっている中学受験生は多くありません。

単純にそのことを知らない場合もありますが、多くの場合は、「選択肢を読むことに夢中になって忘れてしまう」ことがほとんどです。

中学受験生は、「どの選択肢がいいんだ?」とか、「この選択肢は何を言おうとしているんだ?」とか、そんなことを一生懸命に考えているうちに、いつの間にか本文の内容を鑑みることを忘れ、その時点で持っている自身の常識に当てはめて考えようとしがちです。

選択肢の中には、文章中で使われているキーワードそのものか、キーワードを言い換えたものが含まれている場合がたくさんあります。

そのキーワードを見抜く語い力が、選択問題の明暗を分けます。

そのため、語彙力のトレーニングは欠かせません!

②選択肢を比較できるか

二択までは絞れるけど、最後でまちがえてしまう

これは選択問題あるあるですね!

その原因を単純な「語い力不足」と片付けてしまうと、いつまでたっても学力は向上しません!

原因はズバリ、「選択肢を比較する視点」の欠如にあります。

二択までに絞ったのに間違えた問題がお手元にあれば、ぜひここでご確認ください。

どちらの選択肢も、文章中に書かれている内容ではありませんか?

文章問題に必要な力を、仮に「解釈力」と名付けるなら、記号問題に必要なのは「複合力」です。

語い力だけでなく、比較する視点が必要です。

正解の選択肢と、誤りの選択肢を比較してください。

どちらが、選択肢の前に書かれている「質問そのもの」に答えていますか?

ここに意識を向けずして、記号問題の解決はありえません。

そう、記述は文章が読み取れれば対応できますが、記号はさらにそこに語い力と比較力が上乗せされるのです。

③選択肢は積極的に引っ掛けてくることがある

マンスリー、週テスト、育成テスト、首都模試、アタックテスト等々の中で、模試の正答率が高い問題と、低い問題がありますよね。

選択問題で、正答率が30%を切っている問題がありますよね?

20%台のものは、先述の比較パターンで、10%台以下は、いかにもそれらしいことを書いて、受験生を誤った選択肢に全力で誘導する、引っ掛けパターンであることが多いです。

ここで求められる力とは、ますは「解釈力」、次に「語い力・比較力」、それに加えて「出題者の意図に沿う力」まで求められます。

「出題者の意図に沿う力」は、言い換えると、「みんな(=過半数の人)が納得することを見抜く力」とも言えます。

このレベルが出来るようになると、国語が他の科目をけん引する状態になりますし、私としてもそこを目指していただきたいと強く思っております。

この力をつけることは、副作用として、イヤに理屈臭くなって異性にモテなくなるかもしれないという可能性もありますが、おそらく異性にモテることに匹敵する快感があると思います(笑)

いずれにせよ、極的にひっかけにきているため、問いが素直な記述問題より、少しひねくれていますよね。

だから、記述より、記号の方が一般的に難しくなるのです。

【書き抜き】の特徴・取り組みやすい部分・難しい部分

記述問題で出題者が聞きたいことは、

①言葉の定義が掴めているか

②文章を構造的に読めているか

の2つのパターンに大別できます。

①言葉の定義が掴めているか

書き抜きの定型パターンの一つ目が、「言い換え問題」です。

傍線部分の言葉を、別の言葉に言い換えるという、単純な構造なので、小学生も出題者の意図は掴みやすいです。

そして、これは、単純に言葉を知っているかどうかなので、復習も簡単に済ませ、結果に一喜一憂することを繰り返す。

しかし、そこに最大の落とし穴があるのです。

言い換え問題に対応する適切な語い力無しに、書き抜き問題で合格者に匹敵する力をつけることは叶いません。

②文章を構造的に読めているか

先に書いた「言い換え問題」パターンが出来たことで、「書き抜きはできる」、仮に間違えても「間違えたのはたまたま言葉を知らなかったからだ」と考えてしまいがちであることは、出題者は熟知しています。

そこで、分かる人にだけ分かってほしいという秘密の暗号文として、書き抜きの最難関パターンを出題してくるのです!

実際に、難関校の書き抜きは、基本的にもう一つのパターンである、「文章の構造的読解」について聞いているのです。

なお、「構造的に読む」というのは、小学生であれば「どこに何がかいてあるかがなんとなく覚えられる力」と捉えられれば十分です。

対策方法について書くと、大変長くなるので、ここでは書き抜きには落とし穴があるという注意喚起にとどめます。

気になる方は、こちらの記事をご覧ください。

そして、記述のように明確な意味を聞くわけでもなく、記号のように多少のアウトライン(ひっかけがあるものの)が引いてあるわけでもなく、文章という大海原を、指示語、接続語などを羅針盤に探し当てるのは、まるで海賊の宝探しのように苦労の連続なのです。

人気漫画である「ワンピース」が100巻以上も続いていることを考えれば、宝探しがいかに難しいことであるか、ご想像いただけるかと思います。

まとめ

いかがでしょうか。

「出題者の立場に立って考える」と、記述、記号、書き抜きがどのように作られるのかが分かり、難易度の順番も自然と決まってくることがご理解いただけたことと思います。

さて、「難易度の順番は分かった。でも、それぞれの解き方はどうすればいいの?」と思った方は、以下の記事でそれぞれの解き方のコツをご紹介しております。

ご参照いただければ幸いです。

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