中学受験コラム 分からないことを怒る先生

「あの先生、厳しいけれど、うちの子はそれで成績があがったの。」なんて話を聞いたことはありませんか?

怖いけど成績を上げてくれる、言うなれば「頼れる先生」がいる一方で、「うちの子は、何度も同じ話をしても分からなくて、先生に怒られて、勉強が嫌いになって」という話もよく耳にします。

そして、「怒られるのはうちの子が出来ないから仕方ないかも」なんて思っているご家庭もあるでしょう。

では、怒る先生のやり方は正しいのでしょうか。

結論から言うと、適切に「叱る」のはよいけど、「怒る」のはダメ。

そして、家庭教師は、「子供の性格に合わせて、正しく叱る先生を選ぶこと」が正解です。

その理由を見ていきましょう。

目次

怒る先生について

昔のヒット曲に「ケンカは自分が甘えたい人、自分の理解を教えたい人」という歌詞がありました。

人は自分のことを分かってほしくて怒ることがある生き物です。

そして、勉強を教える仕事をしている以上、自身が問題を解けるのは当然として、一般的に人は自身の話している内容が伝わらないことに、失望や怒りを覚えるのは自然なことでしょう。

喜怒哀楽は人間の根本的な感情なので、むしろそこが欠落している人は、基本的な感情が抜けてしまっていて、かえって危険かもしれません。

また、なんでも生徒の言いなりになって、いつもニコニコしているだけで成績が上がるのであれば、ご両親が「お勉強しましょうね」と言いさえすればよいので、家庭教師が入り込む余地はありませんよね。

とはいえ、家庭教師が「だから、私は怒っても良いんだ!」と考えてしまうとしたら、ちょっと短絡的な気がします。

怒る先生の心理

まず、よく怒る先生の心理について、考えてみましょう。

勉強ができる人は、できない人が「悪ふざけ」、「人の話を聞いていない」と感じることが多いです。

これは、勉強に限った話ではないのですが、何かができる人にとって、できない人を見ると不真面目に見えるものです。

また、大人は自身の職務を忠実に全うしようと考えるのが一般的ですから、その不真面目に見える部分を是正しようと試みるのです。

怒る先生は、ある意味、仕事に真面目な先生とも言えます。

ただ、信念を持って学習に取り組んできたからこそ、それが正義だと思い込み、その価値観を中学受験生に押し付けている状態と言えるでしょう。

「怒る」と「叱る」のちがい

怒るはダメだけど、ときに叱るのはよいことだと思います。

怒るとは、「自分が」不愉快な思いをしたことに対する反射的行為であるのに対し、叱るとは、「相手の」成長を願って厳しい態度を取ることです。

つまり、誰のためかというのが、完全に真逆です。

そもそも、ここを明確に線引きできないのに、厳しい怒号をあげることは、もはや暴力でしょう。

先生が怒るのは良くないこと

少し私自身の話をすると、私は子供の頃、大人から暴言を向けられることが多かったような気がします。

「怒りやすい顔」と、嗤いながら言われたこともありました。

その甲斐(?)あってか、自分の嗜虐性を満たすために怒る人と、信頼関係に基づいて叱ってくれる人の見分けがつくようになったのは、ある意味幸運なことだと思っています。

「怒られて奮起する」なんて話も聞きますが、一方的に怒られた経験からは、社会を知ることの役にはたったけど、自尊心をひたすら踏みにじられた気がしています。

もちろん、自分の行動が原因で、人を怒らせたときには深く反省しましたが。

一方で、信頼関係を築いた大人に厳しく「叱られた」と感じたときは、痺れるような痛みを感じたあとに、何か目が覚めるような思いをしたものです。

強靭なメンタルを持っている子は、ちょっとやそっとの叱責にはどこ吹く風なのでしょうが、とりわけ成長期の叱責は人の一生を狂わせるかもしれない、重大な行為だと思います。

親が怒るのは悪いこと?

ここで注意したいのは、私は一概に親が子供に「怒る」ことについては否定しません。

親は子の人生の責任を持っており、将来的にも切ることができない関係であることを考えると、大人と子供の年齢差を考慮した一定のコントロールは必要なものの、よい親であろうとするあまりにご自身の感情を抑圧するのも正解とは言えないと考えます。

そして、多くの親が、怒ると叱ることの違いを明確に区別できているからこそ、ご自身が子供に対して怒ってしまうことに自己嫌悪を感じるというお話も、たくさん伺います。

そんな状況こそ、家庭教師の本領が発揮できるところです。

ご家庭が何を大事にしているかを機敏につかみ、家庭教師という第三者としてのフィルターを通して、怒ることを叱ることに変換するのも、大切な仕事の一部です。

だからこそ、先生は「怒っている場合ではない」のです。

生徒を叱るのは技術である

さて、生徒の目を覚まさせるためには、怒らずに叱ることが大切だといっても、顔を合わせてすぐにダメ出しをする人の話を聞きたいでしょうか?

そんなことはありませんよね。

まずは、1にも2にも、信頼関係の構築が必要です。

信頼関係とは、まず自分は相手のことを考える存在だということを伝え、そして、相手の話を傾聴することから始まります。

同時に、ニコニコして柔和な態度を取るだけでなく、気づいたことは忖度することなく伝えるタイプの人間であると伝えることも大切でしょう。

適切な関係が築ければ、たとえ穏やかな態度であっても、「それは解き方が違う」、「これは以前も間違えていたよ」、「この部分は出来ている。

でも、この部分はまだ身についていない」と事実を端的に指摘する、すなわち、正しく叱る行為につながるものだと思います。

まとめ

以上、怒る家庭教師はよくないことを中心に、叱る技術を持った家庭教師を選ぶためのポイントについてお話しました。

なお、体験授業のタイミングで、子供の様子をよく見ているか、ご家庭での学習の様子について質問してくるかなどは、技術を持った家庭教師かどうかを判断する要素になります。

ご参考になれば幸いです。

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